2週間程前に図書館で借りて来た、川上未映子さんの"夏物語"をやっと読み終えました。久しぶりに読んだ分厚い(私にとっては)小説。長編小説なんて読むの何年ぶりだろうかってくらい読んでいなかったので、集中力が続かず、小説を読むのも集中力なんだなとしみじみ思いました。
感想は…リアルな現実、やるせなさとかどこにも向けることが出来ない悲しみとか、無力感とか、理不尽さとか、そういう目を逸らしたいようなテーマが真っ直ぐにかかれているものだから、目を逸らすことは出来ないんだけど、あぁ、ずっしりくるテーマだ、、、と感じながら読んで(その真っ直ぐさがいいんですけど)、最後に近づくにつれて光が強くなって、最後には光が闇を呑み込んで終わり、という感じで、読み終わったときは世界が明るくなったように感じられるんだけど、やっぱりそこにはどうしようもない悲しみが心の中に残っていて、それでも生きていくしかないんだという気持ちになった本でした。
それで、ブログのタイトルがなんで"ボイジャーとキロン"なのかというと、夏物語のなかの一節に、ボイジャーについてとても心惹かれた部分があって、その話を今日はしたいと思います。
タイトルのボイジャーは、1977年に打ち上げられたNASAの無人宇宙探査機、ボイジャー1号、2号の事です。
私が初めてボイジャーにはっきり意識を向けたのは、BUMP OF CHICKENのうたの歌詞にボイジャーが出て来た時です。
"話がしたいよ"という曲のなかに、
「ボイジャーは太陽系外に飛び出した今も
秒速10何キロだっけ ずっと旅を続けている
それが何がどうしたというのか わからないけど急に 自分の呼吸の音に 耳澄まして確かめた」
という歌詞があって、聴いた時私は単純に、ボイジャーってすごいな!と感動しました。
感動したのと同時に、なにか大切な、言葉にしたい事に出会った気もしたけど、それがなんなのか分からないまま、その時はボイジャーの事は深入りせずそのままでした。
そして今また出会ったボイジャーというキーワード。
夏物語の中で語られているボイジャーは、私にとって占星術のキロンの象徴のように思えて、その部分にとても心惹かれたのです。
夏物語の中で、逢沢さんという男性のお父さんがボイジャーが好きで、子供の頃の逢沢さんに、「つらいときはボイジャーの事を思い出せ」と言ったそうです。「ボイジャーはずっとひとりで、真っ暗な、光も何もないところをずうっと飛びつづけてるんだぞ」と。
(「」内のセリフ:夏物語 川上未映子著 文藝春秋 513ページより)
このセリフを読んで、BUMP OF CHICKENの話がしたいよを聴いた時に、ボイジャーに感動した気持ちの深いところにあった、自分でははっきりと捉えられなかった気持ちについて理解することができました。
私がボイジャーに対して感じていたのは、キロンの癒しのようなものなのかもしれないと。
キロンは、土星と天王星の間をいびつな軌道で周る天体です。ギリシャ神話のケイローンから名前がつきました。
ケイローンは半身半馬のケンタウルス族で、母親にその姿から捨てられてしまいます。だけど神々に育てられたケイローンは優しく聡明な人物に成長し、芸術や音楽に長け、医学や治療のスペシャリストとして活躍していたそうです。
ある時、ヘラクレスの毒矢で負傷したケンタウルス族の傷を治療している時、誤って自分も毒矢で負傷してしまい、強力な毒が全身を回り、ケイローンは苦しむけど、クロノスの息子で不死身だったために死ぬこともできず、苦しみに耐えかねてゼウスに頼んで不死である事を手放し、死を選んだそうです。
キロンは傷ついたヒーラーと言われます。
キロンの名前の由来となったケイローンは、親に捨てられた事で受けた深い心の傷があったからこそ、同じ様に、傷ついた人の心の痛みが分かる類稀なヒーラー(治療者)になることが出来たんだということが由来です。
キロンの癒しは、共感がカギになるようです。
例えば、自分はひとりぼっちで、この先の未来に希望なんて見つかりっこない、絶望的な気分になった時、その気持ちをちょっと楽に出来るのは、同じような体験をしていて、苦しみを分かってくれる、分かりあえると思える存在だと思います。
ボイジャーはそんな存在なんだなと思いました。
私たちが遠い宇宙空間の暗闇の中をひとり進むボイジャーを想像するだけで、心の痛みや、どうしようもない気持ちに何も言わず、黙って付き合ってくれる。
そのあとは、なんだか少し心の中が明るくなる。
ただ思いを馳せるだけで、元気がでたり、不思議な気持ちになったり。
ボイジャー、凄腕のヒーラーじゃないか。
夏物語の中のボイジャーの説明で、ボイジャーについてだいぶ色々知れたけど、もうちょっと詳しく知りたかったのでWikipediaとか他のサイトも少し見てみて、ボイジャーについて知った事を箇条書きにしてみますね。
☆ボイジャー1号☆
・1977年9月5日に打ち上げられる。
・40年以上宇宙の旅を続けている。
・木星と土星に接近、データを地球に送る。
・時速6万kmくらい。宇宙空間で最速の人工物。
・2012年8月25日に太陽圏の境に到達。
それ以降は太陽圏外をへびつかい座の方向へ
飛行中。
・恒星に近づくのは約4万年後。
・2025年頃には太陽から224億4000万kmという
距離に到達するらしい。
・ゴールデンレコードを搭載。
☆ボイジャー2号☆
・1977年8月20日に打ち上げられる。
・1号と同じく40年以上宇宙の旅を続けている。
1号より2週間ほど早く宇宙へ旅立った。
・木星、土星、天王星、海王星に接近しデータを
地球へ送る。
・天王星、海王星を訪れた唯一の探査機。
・時速5,5万kmくらい。
・2018年11月、太陽圏外へ到達。今も射手座の方
向へ飛行中。
・約4万年後、小さな赤色矮星の近くを通過。
・西暦29万8000年には、恒星シリウスの近くを通
過。
・ゴールデンレコードを搭載
☆ゴールデンレコードについて☆
ボイジャーのゴールデンレコード、またはボイジャー探査機のレコード盤とは、1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機に搭載されたレコードである。
地球の生命や文化の存在を伝える音や画像が収められており、地球外生命体や未来の人類が見つけて解読してくれることを期待している。(Wikipediaより)
(Wikipediaより)
ゴールデンレコード、夢があっていいなぁ。
ゴールデンレコードの細かい内容をしらべてみると、風、波、雷や動物の鳴き声などの多くの地球上の自然の音、様々な文化、国の音楽、55種類の言語でのあいさつ、115枚の地球上での生活や文化、太陽系の惑星の写真などが収められているそうです。
もし、もしもこのレコードが気の遠くなるような遥か先の未来に宇宙のどこかで再生される瞬間が訪れるとしたら…なんて、人類のロマンだな~(*´▽`*)
ボイジャーのゴールデンレコードに託されている夢や希望、ロマンは木星の象徴そのものだな。ボイジャーにはキロンだけでなく、木星的な側面もあったんだ。
ひとり、真っ暗な宇宙空間をものすごいスピードで移動しながら、地球上の誰かの心の痛みにそっと寄り添って癒し、ゴールデンレコードという人類の夢と希望をのせて旅を続けるボイジャーって…最強のヒーローなんじゃないのか?
そんな事を考えて遥か彼方のボイジャーを想うと目頭が熱くなります。
はやぶさもそうですけど、探査機の健気さにはまいります。いや、健気っていうのとは違う気もするけど、自分の中の語彙が少なくて他の言葉が見つかりません。
初代のはやぶさなんて、色んなトラブルを乗り越えてミッション達成してまた地球まで帰ってきて、最後はカプセルを分離して本体は燃え尽きるとか、泣ける。
はやぶさ2は地球に帰還してカプセルを落としたら、また新たなミッションに旅立つんですよね。それがいいよ。
はやぶさ2の帰還予定は今年の12月。今年の12月といえば水瓶座での木星と土星のグレートコンジャクション。なんだか絶妙なタイミングでの帰還ですね。どちらも楽しみだ。
だいぶボイジャーとキロンから話がそれてしまいました。
最後に面白いなーと思ったことをひとつ。
ボイジャーが打ち上げられたのが1977年の8月と9月。キロンがチャールズ・T・コワルによって発見されたのが、1977年11月。
同じ年だったんですね。
そして、ボイジャー2号は射手座の方向へ今も飛び続けているけど、射手座のシンボルは神話のケイローンです。
なんだか色々繋がっていきます。キロンは木星と一緒に射手座の支配星で、こうやってボイジャー、キロン、木星、射手座の繋がりを感じると、確かにキロンは射手座の支配星だと言えるのではないか…ということは納得がいきました。
キロンは射手座以外にも、乙女座、魚座とも関係する天体なので、とても多面的で奥の深い存在だと思います。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます(^^)