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遺言と蠍座の世界の宝物。

三浦しおんさんの天国旅行という短編集の、遺言という作品がすごく好きで。


学生の時に耳鼻科で出会った"きみ"に一目惚れした"私"の、"きみ"への遺言がそのまま小説になっています。


なんだかしんみりするタイトルなんですけど、ユーモアがあって笑えるところもあれば、私がきみを思う気持ちに泣けるところもあります。

特にこの短編の最後は本屋さんで立ち読みしたとき泣けて泣けて涙が止まらなくて鼻水まで出てしまって大変だった記憶があります。


この物語は、きみから私へ向けられた「やっぱりあのとき死んでおけばよかったんですよ」という言葉が柱になっているんですけど、占星術の講座で蠍座の世界を学んでいた時に先生の言われていたのはこのことかと思ったんです。


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その時のノート。


遺言の中で私は、きみと一緒に過ごした何十年かの中で、きみが58回(!)ほどこぼした「やっぱりあのとき死んでおけばよかったんですよ」がいったいいつのことだったのか、思い当たる出来事3件を回想していきます。


どの事件も真剣に死の入り口に立っているきみと私。

そしてその度に、生きることを選んできた。


『きみと出会い、きみと生きたからこそ、私はこの世に生を受ける意味と感情のすべてを味わい、知ることができたのだ。』(天国旅行 P92)


蠍座の世界の真髄だなと思いました。


きみと一緒に生きてきた私がきみへ残した遺言は、蠍座の世界の深い底にある、きらりと光る宝物のようです。